西暦2013年 本格的自然釉 武吉廣和 新作展 Ⅳ 茶碗展 |
閉じる |
祝 高速道路開通 赤松30トン、10昼夜の焼成。 |
|
期間:2013年 10月 1日(火)〜16日(水) 時間:AM 9:00〜PM 5:00 |
|
私の茶碗と老子 | |
東洋美術では作家の心の桃源郷をテーマにしたものが多い。 私の窯がある松葉川地域、四万十川の支流日野地川は写真のような清流である。 すぐ近くの松葉川温泉上流を家族で散歩中に撮ったもの。 まだ紅葉前だが清冽な流れや澄んだ淵は美しい。老子を読みつつ散策する。 私の茶碗の自然釉は川の澄み切った水の色、 紅い緋色や金色の土肌は紅葉の色・・・ 作家が制作する時代と空間と宇宙観は作風に決定的影響を与える。 |
|
古四万十川 | |
高知大学の満塩大洸・山下修司両氏の研究によると、40万年以上前、今より海面が100メートルほど低い氷河時代、古四万十川は、北は東津野村の不入山を源流に太平洋に向かって南下、松葉川、窪川、与津地川を経て興津の沖を河口にして太平洋に注いでいた。 |
|
紹鴎信楽と燿碗 | |
39歳の頃、三重県の友人のところに、高知から、ギャラリーのオーナー夫妻と紙すきの名人4人で遊びに行った。 彼は、唖然とするような高額で最近骨董屋で買った空中信楽(空中は光悦の孫)という茶碗でお茶を立ててくれた。 その茶碗は本当に楽しい茶碗だった。 江戸以前の穴窯焼成なのに自然釉の痕跡はみつからず、淡々とした土の表情、かといって、からっとした連房式登り窯の酸化冷却でもなく、茶溜まりは逆に瘤のようにもっこり隆起していて、口辺はべらべらになっていて飲み口は対角にふたつ作られている。褐色で地味なのにどうしたことか茶碗の性根は強靭で崇高。 高知に帰ったあとも忘れられず、脳に矢が刺さったようで気になってしかたがない。そしてその矢はますます大きくなった。 翌年に結婚したので、その茶碗でもう一度お茶を立ててもらおうと新婚旅行に出かけた。 「あれっ。あの茶碗こんなに小さかった?」と言うと、友人は「みんなそう言うよ!」とのこと。 その後、東京国立博物館の林屋晴三氏の鑑定で武野紹鴎の信楽茶碗すなわち「紹鴎信楽」ということに落ち着いたという。 日本でたった4碗目か5碗目かの大発見ということ。 千利休の約束事以前のアウトロー茶碗のお話。 千利休の師である武野紹鴎は「みわたせば 花ももみじも なかりけり 浦のとまやの 秋の夕暮れ」という藤原定家の歌で表現された桃源郷の風景、「枯れかじけ寒かれ」という禅の精神的境地「空」で茶碗を作っている。 これに比して、昭和19年頃制作された出口王仁三郎の極彩色の燿碗は「極楽」「天国」「天界」を物質化しているように思える。 ひとそれぞれである。 |
|