七 月 展
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祝 高速道路開通  穴窯で赤松30トン、10昼夜の焼成。

期間:2014年 7 1日(火)〜7 21日(月) 時間:AM 9:00〜PM 5:00 *木曜定休
会場:ギャラリー 龍窯
   〒786-0097 高知県高岡郡四万十町日野地326
  <ギャラリー龍窯 地図>
   Tel&Fax/0880-23-0054
   作家携帯/090-4506-0572
   ● 龍馬空港からギャラリー龍窯まで 車で1時間半。
     四万十町中央ICより 車で25分、松葉川温泉 手前1kmに看板あり。

 
八 色 鳥

五月の山々は新緑に輝き、深紅の渡り鳥アカショウビンの「ミズヒョロン、ミズヒョロン」という鳴き声が一日中木霊する。
ホトトギスも「テッペン カケタカ」と夜通し鳴いている。
朝5時頃には涼しく爽やかで、もう十分に明るいので松葉川温泉のキャンプ場の自然林に朴の花の開花を観察に通っている。
ヤマボウシは満開、遊歩道沿いに雪もち草はぼつぼつ咲いているが、山路のホトトギスの若草がいたるところに群生しているのには驚いた。



赤鉄橋吊り橋から眺め降ろす朴の花はつぼみをくるんだ紫色の枹がはらりととれて四日間は純白のふっくらしたつぼみが屹立したまま、五日目に最上部から割れて数時間かけて少しずつ少しずつ静かに開花した。
朴の花は高い枝に咲くので、いつも下方から眺めることになる、私にとっては長年の念願が叶った貴重な観察体験だった。
私の場合、このような観察行為が次の作品制作の大切なパッションとなる。

5月25日の日曜日の朝7時頃と10時頃に八色鳥の鳴き声を至近距離で聞いた。
耳の鼓膜が振動するほど「シロペン クロペン」と鳴き続けた。
バイクツーリングの都会の若者達と、バンで来ていた家族の二組のキャンプ客達はラッキーだった、八色鳥の鳴き声と分かればの話だが。
ちょうど今頃は折りたたみ傘のような簡易なテントでも寒くないし、清い支流なので水はそのまま飲める。
彼等は小さなキャンプ用ガスバーナを持ってきていたが、そこらの乾いた流木を拾えば焚き火で調理もできる。
過疎で人が居なくなり鹿もイノシシも渡り鳥も野生動物と貴重な植物は確実に増してきている、自然農法の菜園とジビエという豊かな自然の恵みにくるまれて縄文人のように暮らす喜びは大きい。

梅雨に入った6月の夕暮れ直後の7時頃から8時頃には蛍が川ベリに舞うので雨の止み間に田植えの済んだ川べりを家族で散歩する。蛍は意外に高くまで飛び、家の中まで飛んでくることもある。カブトムシやクワガタ、ミツバチ、蛾の類はこの37年で随分減った。
家の駐車場の栗の木の下を通ったら「ブーン」というすごい高音の羽音がするので見上げたら大量のミツバチだった、一面に咲く菜の花でもこれほどは集まらない。今まで栗の細い地味な花に蜜があるとは知らなかった、栗の花の蜜はどんな味だろう。
眺めていると天蚕の大きな幼虫が三匹、ゆっくり栗の葉を食べていた、さすがに高貴である。オーガニックの若者達の影響か、川の蛍も田んぼの蛙もだんだん増えてきている。

薪割りも順調に進んで、大木坑木で二月に買い付けた肥えた赤松10トンを、ロボットアームが備えつけられた巨大マシーンのようなトラックで大森さんに窯場近くの空き地まで運んでもらった。
これからいつものように、この4メートルの赤松丸太の山をチェンソーで50センチに玉切って、窯場に運び、斧とクサビとハンマーで割る。
標高が高く風当たりの強い自然林の風貌がそのまま窺えるほどの、尋常ではない松材で、節が多くねじれているので強靭、さらに乾燥が進んでいるので、この暑い盛りの夏の薪割りは大変だが、これで一窯分の赤松30トンと空焚き用の杉檜10トンが準備出来たことになる。
とにかく、今どき有り得ないほどの骨っ節の強い頼もしい松材が続いて買えて嬉しい。

強還元と、焚き口から10メートル先の「肝腎な窯の最奥部」まで火足を伸ばすために、たった一カ所の焚き口を閉めて焚くという極めて困難な高度なことをやっているので窯焚きの成否はどうしてもこの30トンの赤松の質に懸かる。
一窯一窯、力の限り、万全の準備をして、納得いくまで焚いて、体系的完成を成し、64歳になった。
千里の波頭を越えて、ここまで来るとは、我ながら不思議なことだと思う。
さらなる目標として、富岡鉄斎のように90歳以降に「化ける」まで冒険の旅はまだまだ続く。
27歳で独立開窯した当初から日本独自の自然釉を体系的に究めて世界中の美術館を個展して回るという志を立てて、越えねば成らない峠は全部越えてきたので、大壺のシリーズ、ピラミッドのシリーズ、ガイヤリーフのシリーズ・・・と連合艦隊は常時揃っている。

今回の個展はその中でも気に入ったものを展示する、難解なものばかりになるだろう。
入館者数を気にして企画しなければならないいまどきの美術館と異なり、ちっぽけでも自分の美術館ではこれが遠慮なくできる。

トップの中央、ピラミッドシリーズの作品「花車」は酸化炎焼成のように見えるが強還元焼成そして炭化冷却の際に火前の耐火煉瓦が収縮してわずか8ミリ開いた小さな隙間からひと筋の外気が入り、一窯で一点だけ黄色の自然釉が固定されたもの。

 

 

 

 

 

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