奥四万十賛歌・原生林と自然釉の壺展
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祝 奥四万十博  穴窯で赤松30トン、10昼夜の焼成。

期間:2016年 423日(土)〜529日(日) 時間:AM 9:00〜PM 5:00 *木曜・定休(5月5日は開廊)
会場:ギャラリー 龍窯
   〒786-0097 高知県高岡郡四万十町日野地326
  <ギャラリー龍窯 地図>
   Tel&Fax/0880-23-0054  作家携帯/090-4506-0572
   ● 龍馬空港からギャラリー龍窯まで 車で1時間半。
     四万十町中央ICより 車で25分、松葉川温泉 手前1kmに看板あり。

原生林とシャクナゲの花

今頃になると、八色鳥の鳴き声に耳を澄ます。
霧雨のなか、仕事の気分転換に
「松葉川温泉の遊歩道のシャクナゲを見に行こう。」と
息子たちに声をかけたが、ふたりとも「今日は行かない。」と言う、

それぞれが今やマイペースで何かに没頭していて、
子供の頃のようになかなか一緒に遊んでもらえなくなった。
つれない返事にガッカリしていると、「私は行く。」と妻が言ってくれて
二人で傘を一本持って出かけた。

この地域は元々、有名な土佐寒蘭や笹百合の自生地でもあり
山野草の宝庫でもある。
花も、萌える若葉も、紅葉も、四季それぞれに美しく、
苔むした岩を流れる清流の淵に佇ずむだけで心が洗われる。

作品のイメージはこういう自然からやってくる。

私の贅沢な自然釉は、3500年前の原生林そのものと思っている。



夕餉の食卓には、カラスのエンドウの若芽、藤の花、ヨモギ、イタドリの芽、ハーブそれぞれの天ぷら、筍料理、イノシシの角煮が並ぶ。
これは雪餅草、家の裏山でイノシシのくくり罠を見回りに行く途中の足許に咲いていた。



5月の末頃には松葉川温泉のキャンプ場の
清流に架かる赤い吊り橋の上から
朴の花を見下ろすことが出来る。
朴の花は高嶺の花ならぬ梢の花で、
見上げることはあっても
上から眺めることは珍しい。
朝5時頃には、もう十分に明るいし、
涼しく爽やかなので
朴の花の開花を観察に通った。



つぼみをくるんだ紫色の枹がはらりと清流に落下してのち、
4日間は純白のふっくらしたつぼみが屹立したまま、
5日目に最上部から割れて数時間かけて少しずつ少しずつ静かに開花した。
すると、すぐ上の至近距離の林で八色鳥が「シロペン クロペン」と鳴き続けた、
実際にすぐそばで聞くと耳の鼓膜が振動するほど大きな音である。


<移住者の方々へ>

私が奥四万十に開窯したのは1978年、27歳の初春であった。
3月3日の朝、窯の傾斜20度と同じ傾斜で南東に開けた山林を切り開いたばかりの平面に3センチの雪が積もって奇麗だった、
窯の立地にも昔から法則がある。
それまで高知、東京、島根、熊本、高知と10回住所が変わっている。
その土地その土地でそれぞれの風土と文化を楽しみ、学んだ。
月々の給料というものが無い芸術家生活に大きな不安と大望を抱いて陶芸家・個人作家を目指した、
そして窯屋ではなく芸術家になった。

縄文土器探索、須恵器の窯跡探し、土佐の陶土探し、という基礎研究から始め、香美市の平安時代の須恵器の林谷古窯趾をモデルとした鎌倉時代の穴窯を設計、築窯、赤松丸太を玉切っての薪割り、作品制作、窯焚き、個展販売、集金・・・
と38年間、独立独行でやってきた。

ロクロ座で寝袋にくるまって寝る生活を続け、
40歳で結婚し、66歳になった現在、妻(55歳)と24歳の長男、21歳の次男との4人で暮らしている。
相変わらず陶芸家として毎日好きなことをやっている。





<地の利が有るよ>

奥四万十の四万十町は標高が高い、穀倉地帯である。
21世紀型の私の清貧家族が暮らす自宅窯場は、清流を眺める南東に開けた山の中腹、標高330メートルにある。
山菜、鹿、イノシシも豊かで、大豆、餅キビ、ジャガイモ、サツマイモ等々で自給自足を目指し、この5月からは鷄も飼う。

ひとりのシャーマンが来訪、じっくり観察して
「地の利だな!だれもが才能を認めざるをえなくなる・・・」と告げてくださった。
そういえば、もう2001年には自然釉の体系的完成は達成している。
こういう日々の営みを通して、この地球という水の惑星の恵みには感謝している。

 

 

 

 

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