奥四万十の花鳥風月 〜月の巻〜 武吉廣和の大壺展
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祝 奥四万十博  穴窯で赤松30トン、10昼夜の焼成。

期間:2016年 96日(火)〜116日(日) 時間:AM 9:00〜PM 5:00 *木曜・定休日
会場:ギャラリー 龍窯
   〒786-0097 高知県高岡郡四万十町日野地326
  <ギャラリー龍窯 地図>
   Tel&Fax/0880-23-0054  作家携帯/090-4506-0572
   ● 龍馬空港からギャラリー龍窯まで 車で1時間半。
     四万十町中央ICより 車で25分、松葉川温泉 手前1kmに看板あり。

奥四万十の花鳥風月 〜月の巻〜

自然農と自然釉は、ちゃんと神さまがいて、有り様が同じと思う今日このごろ・・・
やはり月齢を基準とした太陰暦のほうが植物には合っていると思う・・・
お月様は一年に3〜4センチだんだん地球から離れていっているとか・・・。
もともとシュメールではティアマトと呼ばれていた地球に(惑星X接近かと今騒がれている)ニビルの衛星が衝突して月になった、その時えぐられた部分が地球の海になったという説がある。(イスラエルの考古学者ゼカリア・シッチン提唱)




今回は陶芸家 武吉廣和の「歳月」という月の話。
この2冊の重い大型書籍は向かって左が1965年出版の土門拳・小山冨士夫共著の古信楽の写真集、右がその35年後の1999年出版の藤森武の古信楽の写真集である。
ともに右ページに写っているのは「銘 御所柿の壷」、5000万円で東京国立博物館の所蔵。
写真家土門拳の弟子が藤森武である、「土あじが分かる」という特殊な古美術界独特の審美感が師弟関係という同じ筋にありながら、この横綱クラスの壷になると、35年という歳月で、カメラとカラー印刷の技術の格段の進歩もあろうが、写真家それぞれの心眼に映るその壷の景色と色調が色校正という作業を経て全く異なる壷になるということをつくずく思う。

46年間自然釉を焼いてきた陶芸家としての私の心象風景の御所柿とも遠く隔たる。名品の素顔というものは人間の素顔と同じで、こちらの心の境涯によって観えて来るものが毎日違うのかもしれない、長生きはするものだ。
また、黒澤明や魯山人や土門拳、青山二郎、白州正子、小林秀雄、松永安左衛門等々の目利きコレクターにまつわる興味深い物語を知るにつけ、どうしても写真機には写せない壷の実体というものもあるということも見て取れる甚だ興味深い2冊である。
美術品にたいする人間の電気的脳と波長の限られた眼という器官というものと、霊眼という・・・多次元多重構造の人間のそれぞれの進化のプロセスでのそれぞれの器官に映りこむ仮想現実というテーマでもある。

自然釉の大壷の美的世界を世界のセラミックアート界の「シーラカンス・古代絶滅恐竜クラスの高レベル」としてその大いなる価値を世界の美術界に紹介、そしてその東洋美術界の頂点のひとつとしての地位を確立せしめるために生涯を捧げたような京都の古美術商 近藤金吾氏の業績は甚だ大きい。
私の奥四万十にひきこもった歳月はかれこれ39年にもなろうか、この2冊が自然釉の陶芸家としての私の聖典である、この書籍なくしては体系的完成はなかったろう。近藤金吾氏の古信楽の壷収集への希代の執念と時間と労力には本当に感謝している。
東京国立博物館で日本独自の自然釉の壷群に出会った20歳以来、陶芸家としての46年間は「自然釉の謎の体系的完成」に費やされた。古備前や古丹波、古越前等々の中世の自然釉の壷のなかでもこの2冊に凝縮された近藤金吾氏が収集網羅した古信楽の壷群は白眉である。

そのカラー図版から様々な情報を読み取って窯の構造の発掘考古学的研究、そして400年という忘却の時を経ての復元築窯、窯焚き方法の模索、そして「何故これほど野倣図な焼成なのか?」という最初の疑問から「美しい自然釉焼成の法則というものを把握・理解したうえで、古信楽を超える武吉廣和の自然釉の壷」へと向かう。
このような仕事は「無制限の仕事」という領域に属するもので、「とかく名工とは貧なるものぞかし」と光悦がのんこうを評したようなありようとはなってしまう。
つまり「いくら金がかかってもいい、どんなに時間がかかってもいい、失敗も全部踏んで行く、どうすればどうなるのか全部やる、どこまで行けるのか・・・」という楽しい仕事である。
けっして原価計算やら、マーケット調査というものをして利益追求するようなありようではなく、むしろ、真逆である。
自分は本当に何のためにこの世に生まれてきたのだろう、自分のミッションというものがあるとすればそれは一体何なのだろう・・・。
神様から「おまえに最後にあとひと窯だけ焼かしてやろう」と言われたなら「本当にわたしは何を焼きたいのだろうか・・・」と仕事をする歳月であった。
あとひと窯焚ければ死んでもいい!という奇跡の自然釉の仕事がこんな歳月続くとは・・・
そしてONENESSをまで体験するとは・・・この世は捨てたもんじゃない!


 

 

 

 

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